AIに10分頼るだけで、難しい問題に粘る力が落ちる。米カリフォルニア大学バークレー校などの実験。AIを外すと正答率が下がり、あきらめる人が増えた
・米カリフォルニア大学バークレー校などの研究チームが、AIの助けを10分ほど使っただけで、AIなしで問題に取り組む粘り強さと正答率が下がる、という実験の結果を発表した。大学が2026年10月9日に紹介した
・1,222人が参加した3つの実験で、途中までAIに頼れたグループは、AIを外されたとたんに正答率が下がり、問題を飛ばす人が増えた。AIを使わなかったグループは、変わらなかった
・研究者は、AIを使うなという話ではなく、答えを渡すだけでなく、家庭教師のように教える形にAIを作るべきだと話している
米カリフォルニア大学バークレー校は2026年10月9日、AIへの短い時間の頼りが、人の粘り強さにどう影響するかを調べた研究を紹介しました。
研究は、同校の研究員ブライアン・クリスチャン氏らが、カーネギーメロン大学、マサチューセッツ工科大学(MIT)、オックスフォード大学、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の研究者と行ったものです。専門家の確認を経た版が、言語モデルの国際会議(COLM)で発表されました。
この記事では、大学の発表で分かったことを整理したうえで、ふだんの仕事がどう変わるのかを考えます。
途中までAIに頼れたグループは、AIを外されると正答率が下がった
まずは、実験の中身を見ていきます。
大学の発表によると、研究チームは、ネットで集めた1,222人を対象に、3つの実験を行いました。
| 実験 | 人数 | 内容 |
|---|---|---|
| 1 | 354人 | 分数の基本的な問題を15問解く |
| 2 | 667人 | 実験1を、人数を増やしてやり直す |
| 3 | 201人 | 米国の大学進学の試験(SAT)の読解問題を解く |
参加者は、無作為に2つのグループに分けられました。一方のグループは、問題を解くときにChatGPTを使え、答えをそのまま聞くこともできました。そして、12問目のあとで、AIは使えなくなりました。もう一方のグループは、初めからAIなしで解きました。
結果は、次のとおりです。
・AIを使えたグループは、初めのうちは、AIなしのグループより正答率が高かった
・AIが外されると、正答率がほぼすぐに下がった
・問題を飛ばす(あきらめる)人が、大きく増えた
・AIなしのグループは、最後まで変わらずに解き続けた
読解問題の実験でも、AIが外されると、粘り強さと正答率の両方が下がりました。
研究者は「役に立たない形で、役に立ってしまっている」と指摘
次に、研究者の受け止めです。
クリスチャン氏は、大学の発表の中で、AIは役に立つように作られているが、皮肉なことに、役に立たない形で人を助けていることが多いと分かった、と話しています。
研究チームは、理由として次のことを挙げています。
・AIがすぐに答えを出すと、時間をかけて考える作業が、効率の悪いものに感じられるようになる
・AIに任せると、「苦労しながら考える時間」がなくなる。この時間は、自分の得意なことや関心を見つける助けになる
クリスチャン氏は、これは分数や試験の問題だけの話ではないとも話しています。そのうえで、AIの返事を、答えを渡すだけでなく、家庭教師のように教える形に作ることができると提案しています。
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仕事はどう変わるか:AIには「答え」ではなく「考える手がかり」を頼む場面を作る
ここからは、大学の発表をもとにした僕の見方です。
今回の研究で変わるのは、AIへの「頼り方」だと考えています。
AIに答えを出してもらうのは、速くて楽です。ただ、今回の実験では、たった10分ほど頼っただけで、AIがないときに粘る力が落ちました。仕事でも、AIが使えない場面や、AIの答えが正しいかを自分で判断しなければならない場面は、必ずあります。
すべてを自分でやる必要はありません。自分の力として残しておきたい仕事では、AIに答えそのものではなく、手がかりや考える順番を聞く、という使い分けができます。
文章や企画、見積もりなど、自分の判断そのものが商品になっている個人事業主ほど、「ここは自分で考える」と決めた部分を持っておくことが、長い目で見た強みになりそうです。
あわせて、知っておきたいこともあります。
・実験は、ネット上で行った1回かぎりの短い作業で確かめたもの。長い期間で力がどう変わるかを調べたものではない
・対象は、分数の問題と読解の問題。ふだんの仕事にどこまで当てはまるかは、この研究だけでは分からない
・研究者が勧めているのは、AIをやめることではなく、人の力を伸ばす形でAIを使い、作ること
まとめ:AIに10分頼るだけで粘る力が落ちるという実験。「自分で考える部分」を決めて使う
米カリフォルニア大学バークレー校などの研究チームは、AIの助けを短い時間使っただけで、AIなしで問題に取り組む粘り強さと正答率が下がるという実験の結果を発表しました。AIを外されたグループは、正答率が下がり、あきらめる人が増えました。
AIに答えを出してもらう便利さと引きかえに、自分で粘って考える力が落ちることがある、というのがいちばん大きな学びです。
力として残しておきたい仕事では、AIに答えではなく、考える手がかりを聞くようにするのがよさそうです。
出典
・UC Berkeley News「Using AI for just 10 minutes erodes your ability to persist at hard things」(2026年10月9日) https://news.berkeley.edu/2026/10/09/using-ai-for-just-10-minutes-erodes-your-ability-to-persist-at-hard-things/
・論文「AI Assistance Reduces Persistence and Hurts Independent Performance」 https://arxiv.org/pdf/2604.04721
