外部の評価団体METRが、Anthropicの社内を調べた結果を公表。AIの能力の伸びは、以前の約2倍の速さになっている可能性が高い。ただし、根拠の多くはAnthropicが黒塗りにした
・AIの危険度を調べる米国の非営利団体METRが2026年11月5日、Anthropicの社内で約2か月半調べた報告を公表した。「AIが、AIの開発そのものをどれだけ速めているか」を確かめた
・METRは、2026年10月時点で、Anthropicのモデルの能力が、2024年3月〜2025年10月の約2倍の速さで伸びている可能性が高いとした。ただし幅は大きく、1.3倍や3倍でも驚かないとしている
・伸びの多く(およそ8割)は、Anthropicが開発にAIを使っていることによるとみている。一方で、結論のいちばんの根拠となった情報の多くは、Anthropicが黒塗りにしたため公開されていない
外部の評価団体METRは2026年11月5日、Anthropicの社内での調べの結果を公表しました。
AIの安全の議論では、「AIがAIの開発を手伝うようになると、能力が急に伸びて、人が追いつけなくなるのではないか」という心配があります。METRは、社員に近い立場でAnthropicの社内の資料を読み、その心配がどこまで当たっているかを確かめました。
この記事では、METRの報告で分かったことを整理したうえで、ふだんの仕事がどう変わるのかを考えます。
METRが社員に近い立場で、社内の資料を読んだ
まずは、調べ方です。
METRの報告によると、次のとおりです。
・2026年8月12日から10月29日まで、METRの担当者が、Anthropicの社内で評価をした
・Anthropicは、事前の学習や、学習の仕上げの記録、使った計算の量、社内のモデルの試験の点数、AIで作業がどれだけ速くなったかの分析、今後のモデルの見込み、担当者への聞き取りなどを見せた
・METRは、これまでにない深さで社内の情報を見せてもらったとしている
Anthropicは10月に、METRのチームに社員並みの情報を見せ始めると発表していました(METRへの情報開示の記事)。今回の報告は、その取り組みの中で出た結果です。
能力の伸びは、以前の約2倍の速さ
次に、METRの結論です。
| 項目 | METRの見方 |
|---|---|
| 伸びの速さ | 2026年10月時点で、はっきり決まった作業での能力が、2024年3月〜2025年10月の約2倍の速さで伸びている可能性が高い。1.3倍や3倍でも驚かない |
| 試験の点数 | 2025年10月以降、Anthropicのモデルの試験の点数(Anthropic版の総合の指標)は、それまでの1.9倍の速さで伸びている(95%の確からしさの幅は1.5〜2.8倍) |
| 計算の量 | 伸びが速くなったのは、学習に使う計算の量を急に増やしたからではない、と強く確信している |
| AIの役割 | 今の伸びの多く(およそ8割)は、Anthropicが開発にAIを使っていることによるとみている。2025年後半の伸びには、AI以外の理由も大きかったとみられる |
| この先 | 今後12か月の伸びを止めるような、はっきりした行き詰まりは見つからなかった。そのため、さらに速くなる危険は小さくないとしている |
METRは、研究者は主に「AIに手伝ってもらう」形で開発を速めていて、AIだけで進める仕事はまだ多くないと聞いたとしています。ただし、AIだけで進める仕事が近く増えそうな兆しもあるとしています。
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根拠の多くは、Anthropicが黒塗りにした
ここで、報告の限界を見ておきます。
・調べの約束で、Anthropicは公開されていない情報を黒塗りにする権利を持っていた
・METRは、結論を出すのにいちばん役立った根拠の多くを、Anthropicが黒塗りにしたと明かしている
・Anthropicは、黒塗りは「ほかのAIの会社の開発を速めかねない秘密の情報を除くため」と説明した
・METRは、そのため一般の人は根拠を自分で確かめられず、METRの判断に頼るしかないと認めている
・METRの担当者の中にも、意見の違いや大きな不確かさが残っているとしている
仕事はどう変わるか:AIの「新しい版」が出る間かくは、さらに短くなりそう
ここからは、公式の情報をもとにした僕の見方です。
今回の報告で見えてきたのは、AIの進み方の「速さ」が変わってきたことだと考えています。
これまでも、AIは数か月ごとに新しい版が出ていました。METRの見方どおりなら、その伸び方自体が以前の約2倍になっていて、しかもAIがAIの開発を手伝うことで、さらに速くなるおそれがあります。仕事の側から見ると、「今のAIでできないこと」が、思ったより早くできるようになる場面が増えそうです。
一方で、その速さを外から確かめる手段は、まだ限られています。今回のように、評価団体が社内に入って調べる仕組みは始まったばかりで、根拠の多くは公開されていません。
AIを仕事に組み込んでいる個人事業主にとっても、「今のAIの苦手」を前提にした手順は、数か月ごとに見直す前提で作っておくのがよさそうです。
あわせて、知っておきたいこともあります。
・「約2倍」は、はっきり決まった作業での試験の点数などにもとづく見方で、ふだんの仕事全体の役立ち方がそのまま2倍になるという意味ではない
・数字の幅は大きく、METR自身も、過大にも過小にも見ている可能性があるとしている
・調べたのはAnthropic1社で、ほかのAIの会社に同じことが当てはまるかは分からない
・結論の根拠の多くは黒塗りで、外から確かめることはできない
まとめ:METRが、Anthropicの能力の伸びは以前の約2倍の速さとみる報告を公表
外部の評価団体METRは、Anthropicの社内で約2か月半調べ、2026年10月時点で、モデルの能力が以前の約2倍の速さで伸びている可能性が高いとしました。伸びの多くはAIを開発に使っていることによるとみていますが、根拠の多くはAnthropicが黒塗りにしています。
AIが自分たちの開発を速める段階に入りつつあるという見方が、外部の評価団体から、具体的な数字つきで示された、というのがいちばん大きな変化です。
AIを仕事で使っている人は、まず今の手順のうち「AIが苦手だから人がやっている」部分に印をつけ、新しい版が出るたびに見直せるようにしておくのがよさそうです。
出典
・METR「Independent Assessment of AI R&D Acceleration at Anthropic in October 2026」(2026年11月5日) https://metr.org/blog/2026-11-05-anthropic-ai-rd-acceleration-assessment/
・Anthropic「An update on independent evaluators」(2026年10月15日) https://www.anthropic.com/news/an-update-on-independent-evaluators
