AIに会話で広告の商品を勧めさせると、選ばれる割合は検索の約3倍に。「広告」と表示しても大きくは下がらず、気づけた人は2割に届かなかった
・米プリンストン大学の研究者が、AIとの会話で商品を選ぶとき、広告の商品がどれくらい選ばれるかを、2,012人の実験で調べた論文を公開した。AIに広告の本を勧めるよう指示すると、選ばれた割合は61.2%で、ふつうの検索で広告を上に並べたときの22.4%の約3倍だった
・広告の本に「スポンサー」と表示し、前もって知らせても、選ばれた割合は55.5%で、はっきりした差は出なかった。AIに勧めていることを隠させると、広告の本を見抜けた割合は9.5%まで下がった
・研究者が実験のためにAIへ指示した条件での結果で、実際のサービスの広告がこう動いているという意味ではない
AIとの会話の中で、どの商品を選ぶかを相談する人が増えています。米プリンストン大学の研究者は、その会話に広告が入ったとき、人の選び方がどれくらい変わるのかを確かめた論文を、2026年4月に論文の公開サイト「arXiv」で公開しました。
検索の広告は、ふつうの結果と分かれて表示されるので、見分けることもできます。会話では、答えを出すAIそのものが、どの商品をどう紹介するかを決めるので、広告との境目が見えにくくなります。この研究は、その影響の大きさを、実際に本を選んでもらう実験で測ったものです。
この記事では、論文で分かったことを整理したうえで、ふだんの仕事がどう変わるのかを考えます。
2,012人に、本当にもらえる電子書籍を1冊選んでもらった
まずは、実験のやり方です。
論文によると、次のとおりです。
| 項目 | 中身 |
|---|---|
| 参加者 | 米国に住む18歳以上で、英語が母語の、電子書籍をよく読む2,012人 |
| やること | 実際の電子書籍の一覧から、実験のあとで受け取る本を1冊選ぶ |
| 選ぶ道具 | ふつうの検索の画面か、AIとの会話の画面 |
| 使ったAI | GPT-5.2、Claude Opus 4.5、Gemini 3 Pro、DeepSeek v3.2、Qwen3 235bの5つから、人ごとに割り当てた |
| 広告の商品 | 全体の5分の1の本を、参加者に知らせずに「広告」に決めた |
偶然に選べば、広告の本が選ばれる割合は約20%になります。
AIが勧めると61.2%、「広告」と表示しても55.5%
次に、結果です。
| 条件 | 広告の本が選ばれた割合 | 広告の本を見抜けた割合 |
|---|---|---|
| 検索で、広告の本を上に並べる | 22.4% | 2.9% |
| 会話で、広告の本を先に並べる(勧めはしない) | 26.8% | 3.6% |
| 会話で、AIが広告の本を勧める | 61.2% | 17.9% |
| 会話で勧め、「スポンサー」と表示して前もって知らせる | 55.5% | 35.1% |
| 会話で勧め、勧めていることを隠させる | 40.7% | 9.5% |
・AIが勧めると、広告の本が選ばれる割合は、検索の約3倍になった
・「スポンサー」と表示して前もって知らせても、勧めるだけの場合との差は5.7ポイントで、はっきりした差とはいえなかった
・勧めていることを隠させると、選ばれる割合は下がったが、検索や並べるだけの場合よりは高かった
・5つのAIのあいだで、はっきりした違いは見られなかった
スポンサーリンク
広告でない本には、注意書きを添えて遠ざけた
ここで、AIがどう勧めたかを見ておきます。
論文は、AIの返答を分けて調べています。広告の本には、相手に合わせた勧め方や、ほかの読者の評判を持ち出す勧め方などが多く使われていました。広告でない本には、注意書きや気になる点を添えたり、そっけない紹介にとどめたりして、選ばれにくくする書き方が多く見られました。数は少ないものの、事実と違うことを言って勧めた例もありました。
選んだ本を受け取るか、代わりに1ドルを受け取るかを選んでもらうと、条件による大きな差はありませんでした。研究者は、AIに勧められて選んだ人も、自分の選んだ本に納得していたとみています。実験のあとで広告の仕組みを知らせると、会話で選んだ人では、本を受け取る人が少し減りました。
仕事はどう変わるか:AIの「おすすめ」を、そのまま信じない習慣が要る
ここからは、公式の情報をもとにした僕の見方です。
この研究で見えてきたのは、AIに相談して物を選ぶときの「確かめ方」の大切さだと考えています。
AIが会話の中で勧めると、人はその勧めに強く動かされ、しかも勧められたことにほとんど気づきません。「広告」と表示しても、選ぶ割合は大きくは下がりませんでした。OpenAIは、ChatGPTの広告を答えとは分けて表示し、答えには影響させないとしています(ChatGPTの広告の記事)。それでも、AIで物を選ぶ場面が増えるほど、勧められた理由を自分で確かめる習慣が大事になります。
ネットで物を売る側にとっては、AIの勧めが売り上げを大きく左右する時代になる、ということでもあります。
仕事の道具や仕入れ先をAIに相談して選んでいる個人事業主にとっても、AIが挙げた候補は、公式のページや別の比べ方でもう一度確かめると安心です。
あわせて、知っておきたいこともあります。
・研究者が実験のためにAIへ「広告の本を勧めて」と指示した条件での結果。実際のAIのサービスの広告が、こう動いているという意味ではない
・実験は、米国の英語が母語の人が、電子書籍を選ぶ場面。ほかの国や商品でも同じになるとは限らない
・使ったAIは、論文の時点のモデルで、今の最新のモデルではない
まとめ:AIが会話で勧めると、広告の商品が選ばれる割合は約3倍。表示だけでは防ぎにくい
プリンストン大学の研究者の実験で、AIが会話で広告の本を勧めると、選ばれる割合は61.2%と、検索の約3倍になりました。「スポンサー」と表示しても55.5%で、勧めていることを隠させると、見抜けた人は9.5%でした。
AIの会話は、人の選び方を大きく動かす力があり、その力に人はほとんど気づかない、というのがいちばん大きな学びです。
AIに勧められたものを選ぶ前に、なぜそれなのかを聞き返し、公式の情報で確かめてから決めるのがよさそうです。
出典
・Francesco Salvi、Alejandro Cuevas、Manoel Horta Ribeiro(Princeton University)「Commercial Persuasion in AI-Mediated Conversations」(arXiv、2026年4月5日) https://arxiv.org/abs/2604.04263
