【脂質異常症】〜病気と栄養〜
病気の概要
脂質異常症とは、血液中の脂質の量に異常がみられる疾患の総称です。
脂質異常症は、一次性脂質異常症、二次性(続発性)脂質異常症、家族性脂質異常症とに分類されますが、本章では、一次性脂質異常症について述べます。
一次性脂質異常症の発症に関与するものとして、過食、動物性脂質やアルコールの過剰摂取が挙げられます。
自覚症状はあまりありませんが、放置すると動脈硬化が進行し、心筋梗塞や脳梗塞などを引き起こしやすくなります。
なお、二次性(続発性)脂質異常症とは、ほかの病気が原因となって脂質異常症が引き起こされるものであり、甲状腺機能低下症、ネフローゼ症候群(注1)、糖尿病などが原因疾患として挙げられます。
そのような場合は、それぞれの病気に準じた食事療法が必要となります。
家族性脂質異常症とは、遺伝が原因で起こるものであり、アキレス腱の肥厚、手や甲やひじ、まぶたなどに黄色腫(注2)がみられることが特徴です。
(注1)ネフローゼ症候群とは、腎臓の糸球体に障害が起こり、タンパク尿、低タンパク血症、むくみなどの症状が現れる状態のことをいいます。
(注2)黄色腫とは、黄色い腫瘤のことをいいます。
食事の基本方針
低脂肪食、低炭水化物食、高タンパク質食を考慮して適正な摂取エネルギー量を守り、コレステロールと中性脂肪の摂取を控えます。
肥満を伴っている場合には、適正な体重に達するように食事指導を行います。
(1)摂取エネルギー量を適正にする
過食、過飲はエネルギーの過剰摂取となり、過剰分は中性脂肪として蓄えられて肥満をもたらします。
肥満は脂質異常症の症状を進行させるので、適正エネルギー量を摂取し、標準体重を保持します。
中性脂肪は炭水化物から容易に合成されるので、脂肪を減らすだけでは不十分であることを考慮します。
特に、アルコールや菓子類は控えるようにします。
(2)脂質の過剰摂取を控える
飽和脂肪酸を控え、不飽和脂肪酸を適正摂取します。
特に、LDLコレステロールや中性脂肪の減少作用があるDHAやEPAが含まれる魚(いわし、さんま、さばなど)の積極的な摂取が勧められます。
(3)コレステロールが少ない食品を選ぶ
LDLコレステロール値が高い場合は、卵、魚卵、レバー、脂質の多い肉類などの摂取を控えます。
食品から取るコレステロールは1日300mg以下が望ましいです。
-日常よく使う食品のコレステロール含有量-
(食品100g中のmg)
食品 | コレステロール
含有量 |
食品 | コレステロール
含有量 |
食品 | コレステロール
含有量 |
<卵> | <乳類> | あわび | 97 | ||
鶏卵(全卵) | 420 | 牛乳 | 12 | はまぐり | 25 |
鶏卵(卵黄) | 1,400 | スキムミルク | 25 | しじみ | 78 |
鶏卵(卵白) | 1 | プロセスチーズ | 78 | いか | 320 |
うずら卵 | 470 | 生クリーム | 120 | くるまえび | 170 |
<肉類> | ヨーグルト | 4 | ずわいがに | 44 | |
牛肉(ヒレ) | 66 | <魚介類> | うに | 290 | |
牛肉(肩ロース) | 89 | あじ | 77 | すじこ | 510 |
牛レバー | 240 | いわし | 65 | かずのこ | 230 |
豚肉(ヒレ) | 64 | うなぎ | 230 | たらこ | 350 |
豚肉(肩ロース) | 69 | かつお | 60 | しらす干し | 240 |
豚レバー | 250 | かれい | 71 | かまぼこ | 15 |
鶏肉(ささ身) | 67 | 鮭 | 62 | さつま揚げ | 20 |
鶏肉(もも) | 98 | さば | 64 | 魚肉ソーセージ | 30 |
鶏肉(手羽) | 120 | さんま | 66 | <油脂・調味料> | |
鶏レバー | 370 | まぐろ(赤身) | 50 | バター | 210 |
ベーコン | 50 | まぐろ(脂身) | 55 | マーガリン | 5 |
ロースハム | 40 | まだい | 65 | マヨネーズ(全卵型) | 60 |
ウインナーソーセージ | 57 | あさり | 40 | マヨネーズ(卵黄型) | 150 |
(4)炭水化物の過剰摂取を控える
炭水化物の過剰摂取は、中性脂肪、LDLコレステロールの増加を招くので、十分に注意します。
果糖や砂糖などが過剰にならないようにする。
果糖や砂糖の含有量の多い清涼飲料水の摂取を控えます。
(5)タンパク質を十分に摂取する
タンパク質が不足すると、コレステロールの運び役であるリポタンパクも不足し、肝臓にコレステロールが蓄積されてしまうので、十分に摂取します。
特に、魚介類や大豆に含まれるタンパク質にはLDLコレステロール値を下げる作用があるので、積極的に摂取するとよいです。
また、肉類は、脂質の少ない部位を選ぶようにします。
(6)ビタミンを十分に摂取する
特に、ビタミンB2は、脂質代謝に関与して血中脂質の処理を促進します。
(7)食物繊維でコレステロール値を下げる
食物繊維はコレステロールの吸収を抑制して排せつを促進し、LDLコレステロール値を下げる作用があります。
特に、果物や野菜に多いペクチン、こんにゃくのグルコマンナン、海藻類のフコイダンなど、水溶性食物繊維が有効です。
(8)アルコールの過剰摂取を控える
アルコールは中性脂肪を増やすので、適度に制限します。
(9)減塩食にする
食塩(ナトリウム)は血圧を上昇させて動脈硬化を促進させるので、制限が必要です。
カリウムを含む食品を十分に取ることも重要です。
(10)禁煙する
ニコチンが末梢血管を収縮して血圧を上昇させ、動脈硬化が促進するので、禁煙する。
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