HISが、法人の出張の見積もりをAIエージェントで自動化し、月100時間を減らした。まず「単純な往復」だけに絞り、最後に決めるのは人
・旅行会社のエイチ・アイ・エス(HIS)が、法人の出張の手配のうち、メールで届く依頼から見積もりを作る作業を、UiPathのAIエージェントとロボットで自動化した。2026年4月に動かし始めた
・2026年7月時点で、拠点の作業時間は月100時間減った。対象のメール1,000件のうち、約400件は、AIが作った文面を人が手直しせずに送れた
・自動化の対象は、出張の約6割を占める「出発地と目的地の単純な往復」の見積もりに絞った。いちばんの関門は、技術より、社内のAIの利用の決まりを通すことだったという
旅行会社のHISは、法人の出張の見積もりの作業を、AIエージェントとロボットで自動化しました。業務の自動化の道具を提供するUiPathが、HISの事例として公開しています。
コロナ禍で海外旅行の事業が大きく落ち込んだHISは、人員を他の事業に回していました。その後、法人の出張の需要が急に戻り、限られた人数で手配をこなす必要に迫られていました。
この記事では、UiPathが公開した事例で分かったことを整理したうえで、ふだんの仕事がどう変わるのかを考えます。
見積もりの作業に、1件20分かかっていた
まずは、自動化の前の課題です。
事例によると、法人の出張の手配は、見積もり、予約、請求、入金、発券、チケットの納品の6つの工程で進みます。
・最初の見積もりの作業に、平均20分かかっていた。お客様の要望や規定に合う航空券を出すまで、何度もやり取りが要る案件もあった
・依頼のメールは、会社や担当者によって書き方も形式もばらばらで、読み取るのが難しかった
・担当者の慣れによって、見積もりの質にばらつきがあった
・2023年ごろから、これまでのAIで見積もりの効率化を数か月試したが、目指す性能が出なかった
「単純な往復」だけに絞って始めた
次に、どう自動化したかです。
・6つの工程のうち、最初の見積もりだけを対象にした
・さらに、出発地と目的地を往復する「単純な往復」に絞った。いくつもの場所を回る旅程は難しく、担当者の専門性が要るため
・出張の約6割が単純な往復で、そのうち手作業で処理していた分が、全体の約4割にあたる
・AIエージェントが依頼のメールを読み取り、見積もりを作り、システムに登録して、メールを送る一歩手前まで準備する
・見積もりの精度を上げるため、約半年、ほぼ毎日試しては直すことをくり返した
| 項目 | 結果 |
|---|---|
| 運用の開始 | 2026年4月半ば |
| 手直しなしで送れたメール | 対象1,000件のうち約400件(2026年7月) |
| 減った作業時間 | 拠点で月100時間 |
| 次の目標 | 対象を増やして、月300時間以上を減らす |
2026年8月からは、関東地区のすべてのお客様に対象を広げています。
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いちばんの関門は、社内のAIの決まり
ここで、技術以外の壁を見ておきます。
HISの担当者は、いちばんの関門は、社内のAIの利用の決まりを通すことだったかもしれないと話しています。AIにお客様の情報を扱わせることには、会社のセキュリティの上で厳しい制限があるためです。大手の金融機関での採用例などを示して、AIで課題を解決できることを説明し、ようやく社内の承認が通ったといいます。
仕事はどう変わるか:AIに任せる仕事は「いちばん多くて、いちばん単純なもの」から
ここからは、公開された事例をもとにした僕の見方です。
HISの事例で参考になるのは、AIに任せる仕事の「しぼり方」だと考えています。
AIを入れるとき、つい仕事全体を任せようとしがちです。HISは、6つの工程のうち最初の1つ、その中でも「単純な往復」という、数が多くて単純なものだけに絞りました。それでも月100時間が減り、浮いた時間を、専門性が要る複雑な旅程に回せます。最後に決めるのは人、という線も守っています。
10月24日に紹介したAI導入の調査でも、課題をはっきりさせてから入れた会社ほど成果を感じていました。HISの事例は、その具体的な見本と言えそうです。
見積もりや問い合わせへの返信をくり返している個人事業主にとっても、仕事全体ではなく、「いちばん多くて、いちばん型が決まっているもの」から1つだけAIに任せてみるのが、始めやすいやり方になりそうです。
あわせて、知っておきたいこともあります。
・紹介したのは、道具を提供するUiPathが公開した事例。数字は2026年7月時点のもの
・約400件は手直しなしで送れた一方、残りは人の手直しが要った。AIの見積もりは、人が確かめる前提で使う
・お客様の情報をAIに扱わせるときは、社内の決まりやお客様との約束を先に確かめる
まとめ:HISが出張の見積もりをAIで自動化し、月100時間減。単純な往復に絞り、決めるのは人
HISは、法人の出張の見積もりを、UiPathのAIエージェントとロボットで自動化しました。単純な往復の見積もりに絞って始め、月100時間の作業を減らし、1,000件のうち約400件は手直しなしで送れました。いちばんの関門は、社内のAIの決まりを通すことでした。
AIに任せる仕事を、いちばん多くて単純なものに絞って始め、浮いた時間を人にしかできない仕事に回す、という進め方の見本が示された、というのがいちばん大きな学びです。
AIを仕事に入れるなら、まずくり返しが多くて型が決まった作業を1つ選び、最後の確認は人がする形で始めるのがよさそうです。
出典
・UiPath「顧客事例:株式会社エイチ・アイ・エス」 https://www.uipath.com/ja/resources/automation-case-studies/his
