「考えるモデル(推論モデル)」とは?答える前に考えるAIのしくみと、「考えの深さ」の選び方。深く考えさせるほど正確に、浅くすれば速く安く
・「考えるモデル(推論モデル)」は、問いを受けてすぐ答えるのではなく、答える前に問いを分析し、いくつかの答えの候補を比べてから答えるAI。難しい問題ほど正確に答えやすくなる
・最近のAIは、どれくらい考えるかを「浅い・ふつう・深い」のように選べるものが多い。OpenAIのGPT-6.1 Terra、Mistral Large 4、国産のSarashinaやPLaMoも、考えの深さを選べる
・深く考えさせると正確になる一方、時間と費用がかかる。簡単な仕事は浅く、難しい仕事は深く、と使い分けるのがこつ
最近のAIのニュースで、「考えるモデル」「推論モデル」「思考の深さ」という言葉をよく見かけるようになりました。10月だけでも、国産のSarashinaに初めての考えるモデルが出たり、Mistral Large 4が考えの深さを3段階で選べるようになったりしています。
ただ、「考える」とは何をしているのか、深さをどう選べばいいのかは、あまり説明されていません。
この記事では、各社の公式の発表をもとに、考えるモデルのしくみを整理したうえで、ふだんの仕事がどう変わるのかを考えます。
考えるモデルは、答える前に「下書き」をする
まずは、考えるモデルが何をしているかです。
SB Intuitionsは、国産のAI「Sarashina3.2 mini thinking」の発表で、考えるモデルのしくみを次のように説明しています(Sarashinaの記事)。
| 種類 | 答え方 |
|---|---|
| 考えないモデル(指示モデル) | 問いを受けて、すぐ直感的に答える |
| 考えるモデル(推論モデル) | 問いを分析し、いくつかの仮説から答えの候補を挙げ、見直したうえで、最終の答えを出す |
人にたとえると、聞かれてすぐ口に出すか、頭の中で下書きをしてから答えるかの違いです。考える時間を取ることで、より難しい問題を解けるようになります。考えた過程と最終の答えを分けることで、「決まった形の答えだけを出してほしい」ときの正確さも上がるとしています。
「考えの深さ」は選べる
次に、考えの深さの選び方です。
最近のAIは、どれくらい考えさせるかを選べるものが多くなっています。
| AI | 選べる深さ | 各社の説明 |
|---|---|---|
| Sarashina3.2 mini thinking | low・medium・high | 時間と精度のつり合いを調整できる |
| Mistral Large 4 | Low・Medium・High(初めの設定) | Lowは簡単な仕事、Mediumはふだんの仕事、Highは高い精度が要る難しい仕事向け(Mistral Large 4の記事) |
| PLaMo 3.1 Prime | 推論モード・非推論モード | 非推論モードは出力の量を90%減らし、速く安く答える(PLaMoの記事) |
| GPT-6.1 Terra | 推論の設定を選べる | 間違いを誘う質問での誤りの割合は、低い設定で16.7%、最も高い設定で4.3%(GPT-6.1 Terraの記事) |
GPT-6.1 Terraの数字を見ると、深く考えさせるほど間違いが減ることがよく分かります。
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深く考えさせると、時間と費用がかかる
ここで、注意点を見ておきます。
考える過程も、AIが文字(トークン)を作って進めています。そのため、深く考えさせるほど、答えが出るまでの時間が長くなり、使う量(料金)も増えます。PLaMoが、考えないモードで出力の量を90%減らせるとしているのは、その裏返しです。
SB Intuitionsは、お客様の対応の例で、注文の状態や決まりのような大事な事実を道具で調べられる場合は、浅い設定でも適切に対応でき、答えを速くできると説明しています。
仕事はどう変わるか:AIに頼むとき「どれくらい考えさせるか」も選ぶようになる
ここからは、公式の情報をもとにした僕の見方です。
考えるモデルが広がって変わるのは、AIへの「頼み方の選択肢」だと考えています。
これまでは、どのAIを使うかを選ぶだけでした。これからは、同じAIでも、どれくらい考えさせるかを、仕事に合わせて選ぶことになります。メールの言い回しを整える、短い要約を作る、といった簡単な仕事は浅く速く。数字の確認や、条件の多い計画づくり、間違えると困る判断は深く。こう使い分けるだけで、待ち時間と費用を抑えながら、大事な仕事の正確さを上げられます。
AIに毎日いろいろな仕事を頼んでいる個人事業主にとっても、「急ぎで簡単な仕事は浅く、間違えられない仕事は深く」という自分なりの決まりを作っておくと、使える量を上手に配分できそうです。
あわせて、知っておきたいこともあります。
・深く考えさせても、間違いがなくなるわけではない。数字や事実は自分で確かめる
・考えの深さの選び方や名前は、AIごとに違う。使っているAIの画面や説明で確かめる
・深く考えさせると、プランの使える量を多く使うことがある
まとめ:考えるモデルは、答える前に下書きをするAI。深さを仕事に合わせて選ぶ
考えるモデル(推論モデル)は、答える前に問いを分析し、答えの候補を比べてから答えるAIです。最近は、考えの深さを選べるものが多く、深くするほど正確に、浅くするほど速く安くなります。
AIに頼むときに、どのAIを使うかだけでなく、どれくらい考えさせるかまで選ぶ時代になってきた、というのがいちばん大きな変化です。
まずは、いつもの仕事を「浅くてよいもの」と「深く考えさせたいもの」に分けて、設定を切りかえてみるのがよさそうです。
出典
・SB Intuitions TECH BLOG「国産LLM Sarashina3.2 mini thinking の紹介」(2026年10月29日) https://www.sbintuitions.co.jp/blog/entry/2026/10/29/133000
・Mistral AI「Mistral Large 4 (Le Chonk) is now open weight」 https://mistral.ai/news/mistral-large-4-oss/
・Preferred Networks「国産生成AI基盤モデルPLaMo PrimeにWeb検索・Deep Research搭載」(2026年10月27日) https://www.preferred.jp/ja/news/pr20261027
・OpenAI「Introducing GPT-6.1 Terra」(2026年10月26日) https://openai.com/index/introducing-gpt-6-1-terra/
