【薬の相互作用】
薬の相互作用には、薬と薬の相互作用と、薬と食べ物の相互作用があります。
この相互作用を知らずに薬を服用すると、薬の効果が強く出すぎたり、思わぬ副作用が出るといった危険が起こりえます。
薬を服用し、その効果を適正なものにするためには、この相互作用にも注意が必要です。
薬と薬の相互作用
2種類以上の薬を併用した場合、どのような薬であっても体の中で何らかの作用が起こる可能性があります。
互いに良いほうに作用することもあれば、反発しあって悪いほうに作用することもあります。
これらすべてを「薬の飲み合わせ(相互作用)」といいます。
<主な薬の相互作用>
●薬が効きすぎる
例)血糖降下剤+鎮痛剤→低血糖
●薬が効きにくくなる
例)利尿剤+鎮痛剤
●服作用が出る
例)抗生物質+鎮痛剤→けいれん
薬の相互作用で問題となるのは、薬が効きすぎる場合と思いがけない副作用が出る場合です。
相互作用による事故は、薬の改善や飲み合わせの回避などによって少なくなってきています。
しかし、次々と新しい薬が開発されるので、取り扱いには十分な注意が必要です。
薬と食べ物の相互作用
日常的に食べたり飲んだりしている食品の中にも薬と相性の悪い成分が含まれています。
相互作用の現れ方には個人差があります。
何か気になる症状が現れた場合には、すぐに主治医に相談するようにしてください。
特に、肝臓の機能が低下している高齢者は、副作用や相互作用が現れやすいので注意が必要です。
服用している薬と相性の悪い食べ物は、1〜2時間ほど間をあければ問題のないものもあれば、時間をあけても影響が出てしまうものもあります。
ですから基本的には薬の服用中は避けたほうがよいでしょう。
相互作用を防ぐためにも、薬を処方された際には、飲み合わせによる注意の必要があるかどうかをしっかり確認するようにしましょう。
<アルコール>
薬もアルコールもほとんどが肝臓で代謝されます。
これらを一緒に飲むと薬とアルコールが同じ酵素で代謝され、十分に代謝されないまま血中に入って薬の効き目が強く現れてしまいます。
●アルコールと相性が悪い薬
睡眠薬、血糖降下剤、強心剤、消化性潰瘍剤、抗生物質、抗結核剤、抗精神薬など。
<カフェインを含む食品>
カフェインはコーヒーや緑茶、紅茶、コーラ、ドリンク剤などに含まれ、強い覚醒作用、利尿作用があります。
1回の摂取量が300mgを超えるとイライラや頭痛などの副作用が現れます。
カフェインは頭痛薬や風邪薬にも含まれているため、一緒に飲むとカフェインの過剰摂取となり、頭痛、イライラ、動悸などの症状が現れる可能性があります。
また、ぜんそくの薬(テオドール)はカフェインと化学構造がよく似ているため、代謝や排泄が遅れ、効き目が強く現れたり、副作用が現れたりする可能性があります。
睡眠薬や抗不安薬と一緒にのむと、薬の精神鎮静作用とカフェインの覚醒作用が相反し、効き目が薄れます。
●カフェインと相性が悪い薬
頭痛薬、風邪薬、ぜんそくや慢性気管支炎の薬、睡眠薬、抗不安薬など。
代表的な飲料のカフェイン含有量(目安)は以下のとおり。
・コーヒーのカフェイン含有量
60mg/100ml(浸出方法:コーヒー粉末10g/熱湯150ml)
・インスタントコーヒーのカフェイン含有量
57mg/100ml(浸出方法:インスタントコーヒー2g/熱湯140ml)
・紅茶のカフェイン含有量
30mg/100ml(浸出方法:茶5g/熱湯360ml、1.5〜4分)
・煎茶のカフェイン含有量
20mg/100ml (浸出方法:茶10g/90℃430ml、1分)
医薬品のカフェイン含有量は製品によっても異なるため、薬剤師に確認するようにしましょう。
<牛乳>
便秘薬など、腸で溶けるように表面にコーティングが施してある薬を腸溶錠といいます。
これを牛乳と一緒に飲むと、胃の中で溶けてしまいます。
これは胃酸を中和することにより、コーティングを溶かしやすくしてしまうためです。
胃で溶けた薬は、本来作用するはずの腸内で働けなくなり、さらに胃を刺激して吐き気を引き起こします。
抗生物質(テトラサイクリン系)を牛乳と一緒に飲むと、薬の成分が牛乳に含まれるカルシウムと結合して吸収が悪くなります。
その結果、薬の効果が3分の1から4分の1以下になってしまうこともあります。
●牛乳と相性が悪い薬
腸溶錠、強心剤、抗生物質、抗結核剤、抗真菌薬など。
<野菜・果物>
●納豆、緑黄色野菜、ひじきなどに含まれるビタミンKは血液を凝固させる作用があります。そのため抗凝固剤(ワーファリン)と一緒に取ると薬の作用を阻害します。特に、納豆は体内でビタミンKを多量に作り出すため、注意が必要です。
●キャベツなどに含まれるグルクロン酸は、解熱鎮痛剤(アセトアミノフェン)の血中濃度を低下させ、作用を弱めます。
●グレープフルーツには、苦味の成分として、ナリジン、クエルセチン、ケンフェロールなどのフラボノイド類が含まれています。これらが鎮痛剤やカルシウム拮抗剤の代謝を阻害して血中濃度を高めるため、作用が強くなります。
●バナナに含まれるチラミンは、間接的な交感神経興奮作用を持つため、抗結核剤や抗うつ薬によって増強されて、頭痛や高血圧などの症状が現れます。なお、チーズ、ヨーグルト、チョコレートなどにもチラミンが含まれているので注意が必要です。
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