【食生活と食文化】
原始時代は、野獣や野草などの動植物を狩猟や採取によって得て、傷まないうちに消費し、生計を立てるといった、その日暮らしに近いような食生活であったと考えられています。
しかし、次第に野獣や鳥を飼育して家畜とし、野草や木を改良して作物や果樹として利用するようになりました。
そして、それぞれを増殖させ、生産物を増やし、貯蔵して、飢饉に備えるようになりました。
さらに、魚、肉、卵、乳、果実、種実、穀物といった食物を利用し、火や道具を使っておいしく加工する知恵を身に付けました。
酒や酢、発酵乳のような微生物を利用する知恵も加わり、さまざまな調理技術を用いて、食べやすく、おいしい料理をつくり出し発展させてきました。
食生活とは
食生活とは、単に食物を摂取することだけを指すのではなく、食物の生産から食べることにまつわる行動をすべて含めた概念です。
すなわち、食生活とは、人間の生活において、食物の生産・流通、選択・購入・調理、摂取など、食物を摂取するまでの一連の食の営みを指すといえます。
<生産・流通>
生産・流通の段階では、その土地の気候や風土、栽培や貯蔵・加工の技術が関与しています。
生産や流通にかかわる設備などが発展することで、新しい食物の開発や、流通方法などが多様化しています。
<選択・購入・調理>
選択・購入・調理の段階は、消費者が食物を選択して、購入し、調理するまでの過程です。
この段階では、地域や家庭によって違いがあるため、個性が表れる場でもあります。
しかし、現代では加工食品の種類が豊富になるなど、外部化されることが多くなっています。
<摂取>
摂取の段階では、実際に食べる食事内容だけでなく、明るく楽しい食卓の雰囲気づくりも重要な因子になります。
料理に合った食器の選択、音楽を流すなどの食空間の演出は、食生活の豊かさ、楽しさに影響を及ぼします。
食文化とは
食文化とは、人々が自らの手で長い年月をかけて築き上げてきた地域の気候風土に合った食物や食習慣のことをいいます。
生命維持や成長に必要な栄養素の補給にとどまらず、文化による価値観に従って食物の種類を選択したり、料理法や食事作法を変化させたり、断食をする食習慣を持つようになります。
食事を取る時刻、回数、内容などは時代や社会によって異なるため、食事は栄養補給だけではなく、文化であるといえます。
つまり、世界の食文化は、その地で取れた農産物などの食材と、その地域特有の食習慣などが相まって形成されてきたものなのです。
<日本の食文化>
わが国の食文化の歴史は、野原での狩猟や海辺での貝の採取を経て、弥生時代の稲作からはじまると考えられています。
その後も雑穀の栽培が行われ、野菜や山菜、魚介類が中心となっていきました。
肉類は鳥や猪、鹿などでしたが、明治時代に入って本格的に牛肉などを食べる習慣がはじまりました。
第二次世界大戦時には食糧が極端に不足しましたが、戦後、畜産物の需要が増え、経済の復興とともに食生活改善運動なども進み、食生活は次第に豊かになりました。
米ばかりでなく、パンやめんの摂取量も増加し、主食の摂取様式は戦前とは異なってきました。
また、1960年代の経済の高度成長に伴う社会情勢の変化は、食事の意義、食卓の人間関係、料理技法を大きく変える要因となりました。
1975年ごろには米を中心として、魚介類、野菜、大豆、海藻類など国内で捕獲、生産される身近な素材を組み合わせる食生活のスタイルに肉類、卵、乳製品などが加わるようになりました。
こうして、日本の食文化の優れた点を継承しつつ、健康的な「日本型食生活」が実現し、地域に根ざした食生活が確立していきました。
【栄養と健康】についてのまとめ記事はこちら
健康管理士について知りたい方はコチラをご覧ください。