【食物アレルギー】~病気と栄養~
病気の概要
私たちの体には、異物(抗原・アレルゲン)が体内に侵入したときに、対抗する物質(抗体)をつくって異物を除去するシステム(抗原抗体反応)が備わっています。
抗原抗体反応が適切に機能していれば「生体防御」となり、過剰に反応すると生体防御を逸脱して「アレルギー反応」を起こします。
食物アレルギーとは、特定の食品を飲食することによって体内に抗原となる物質が取り込まれ、アレルギー症状が起こる免疫反応をいいます。
アレルギーの原因となり得る食品は、年齢による特徴があり、乳児期から幼児期にかけては鶏卵と牛乳がその半数以上を占めます。
次いで小麦、そば、甲殻類などが挙げられます。
その後、加齢とともに80~90%はこれらの耐性を獲得していくといわれています。
アレルギー症状は、抗原となる食物を摂取した後に血液を通じて全身へ運ばれた栄養素のうち、特定のタンパク質を異物(抗原)とみなされたものに体が攻撃を与えることによって引き起こされます。
タンパク質が完全に消化されないまま吸収されると異物とみなされることが多いため、食物アレルギーは消化器官が未発達な乳幼児に起こりやすいのです。
乳児が、食経験のない食物に対してアレルギー症状を起こすことがありますが、母親が食べた食物の一部が母乳中に分泌され、乳児の体内にその食物に対するIgE抗体ができたためと考えられています。
代表的なアレルギー症状は次の通りです。
-食物アレルギーの症状-
部位 | アレルギーの症状 |
全身 | アナフィラキシー(注1) |
皮膚 | 掻痒(かゆみ)、紅斑、じんましん、アトピー性皮膚炎など |
気道 | 鼻汁、鼻炎、痰嗽(たんそう)(注2)、気管支喘息など |
消化管 | 吐き気、嘔吐、腹痛、下痢、便秘、血便、口腔アレルギー症候群 |
神経 | 偏頭痛、けいれんなど |
泌尿器 | ネフローゼ症候群、アレルギー性膀胱炎、夜尿症など |
そのほか | 血小板減少症、関節炎、結膜炎、筋肉痛など |
(注1)アナフィラキシーとは、主に食物やハチ毒、薬剤など特定の起因物質によって生じた全身性のアレルギー反応のことをいいます。重症になると血圧低下を伴うアナフィラキシーショックという危険な状態になり、死に至ることがあります。
(注2)痰嗽とは、痰が胸につかえて、咳が出ることをいいます。
食事の基本方針
医師の指導のもと、問診、皮膚反応テストなどによる診断によってアレルゲンを見極め、除去することが重要です。
(1)アレルゲンを的確に把握し除去する
アレルゲンとなる食品自体に加え、アレルゲンを含む加工食品のすべてを除去する必要があります。
例えば、ハムやソーセージなどの食肉加工品に対するアレルギー発症は、食肉アレルギーではなく、つなぎとして使用される乳および卵がアレルゲンである可能性が高いです。
また、牛乳がアレルゲンになる人は、牛肉もアレルゲンとなる可能性があるため、牛肉の摂取には配慮が必要です。
同様に、卵がアレルゲンになる人は、鶏肉もアレルゲンとなる可能性があります。
(2)加工食品の表示を確認する
2002年4月からアレルギーを起こしやすい物質のうち、7品目(特定原材料という)を加工食品に表示することが義務化されました。
また、過去に一定の頻度で重篤な健康被害が見られた20品目(特定原材料に準ずるものという)については、可能な限り表示に努めるよう奨励されています。
-食品衛生法により表示を義務または奨励されている食品-
表示方法 | 名称 | アレルゲンになりやすい食品 |
義務
(7品目) |
特定原材料 | えび、かに、小麦、そば、卵、乳、落花生 |
奨励
(20品目) |
特定原材料に準ずるもの | あわび、いか、いくら、オレンジ、キウイフルーツ、牛肉、くるみ、鮭、さば、大豆、鶏肉、バナナ、豚肉、まつたけ、もも、やまいも、りんご、ゼラチン、カシューナッツ、ごま |
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アレルゲンを除去するための調理方法の工夫
(1)食品を加熱する
食物アレルギーを起こす原因となるタンパク質は、加熱すると変性してアレルギーを起こしにくくなります。
果物などもはじめて食べるときは、シロップで煮るなどの工夫をすることでアレルギー発症のリスクが軽減します。
(2)脂質の使用はできるだけ控える
脂質の過剰摂取は、アレルギーの症状を悪化させます。
炒め物などはテフロン加工のフライパンを使用すると脂質の使用量を減らすことができます。
また、油揚げや厚揚げは湯引きして余分な油を除去するとよいです。
(3)調理器具や食器をよく洗浄する
食物アレルギーは、アレルゲンを微量に摂取しただけでも発症します。
包丁、まな板、鍋などの調理器具や食器はよく洗うように心掛けます。
(4)新鮮な材料を用いる
食品の鮮度が落ちるとアレルゲンになりやすくなります。
(5)同じ食品を頻繁に使用しない
食べられる食品であっても繰り返し大量に摂取すると、その食品に対しての抗体ができてアレルギー反応を起こすことがあります。
同じものを繰り返し食べるのではなく、食べられるものの範囲を狭めないように工夫する必要があります。
(6)食事記録を付ける
食物アレルギーであることが分かったら、食事の記録をとるようにします。
原因が分からない時期は「この食品かもしれない」と判明するきっかけになったり、原因が分かってからも食生活全体を把握するのに役立ちます。
食べたものは料理名だけでなく、素材、調味料などすべて記入し、間食、飲み物、薬なども記録します。
また、旅行や運動会など、その日に起きた出来事、かゆみ、発疹など、その日の症状も書き留めるとよいです。
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