【乳児期の栄養】~年代別の栄養~
乳児期(0歳)における発育は、生後3~4カ月ごろまでが最も急速な体重の増加を示し、出生時を約3kgとすると約2倍になり、満1年で約3倍になりまます。
そのため、この時期の栄養は重要で、充実した授乳栄養、離乳栄養が必要となります。
発育を示す身長と体重とのバランスは、カウプ指数を陥ると便利です。
カウプ指数とは、栄養不良の乳児を見つけたり、肥満の判断に用いられる指数です。
体重をg、身長をcmの数値として、次の式で計算します。
乳児期に肥満であっても、1歳をすぎて歩きはじめるようになると肥満が急速に軽快することもあります。
従って、成長の最も著しい乳児期には、よほどのことがない限り、乳汁や食事の制限は行わず、積極的に運動を取り入れるなど、消費エネルギー量を増やす努力をします。
授乳栄養
新生児を含めて、乳児期の前半(5カ月ごろまで)は乳汁によって栄養を取ります。
母乳によるものを「母乳栄養」、粉乳によるものを「人工栄養」、母乳と粉乳の両方を用いるものを「混合栄養」といいます。
(1)母乳栄養
母親による授乳は、母親が子どもに栄養を与えるという行為にとどまらず、母子関係のスタートでもあります。
母乳が十分に分泌され、それを乳児がしっかり飲むことによって、母親としての自信や自覚が形成されます。
1)母乳栄養の長所
●乳児の疾病、死亡率が低い
●乳児の必要とする栄養素をすべて含んでいる
●乳児の消化・吸収、代謝への負担が少ない
●細菌などを含まず衛生的である
●アレルギーの心配が少ない
●母子間の接触が情緒的発達によい
●子宮の収縮を促し、母体の回復を早める
●手間が掛からず、経済的である
2)初乳の効果
初乳とは、出産後5日間分泌される母乳のことをいいます。
分泌量は少ないが、免疫物質を多く含み、タンパク質やミネラルが豊富に含まれており、新生児に必要な栄養素を与えることができます。
初乳の成分は日々変化し、成分の変化に伴い6~10日は移行乳、10日以降は成熟乳と呼ばれます。
(2)人工栄養
母乳を与えられない場合には、母乳以外の栄養材料で乳児を育てることになります。
人工栄養には調製粉乳と牛乳があります。
1)調製粉乳
調製粉乳とは、「生乳、牛乳もしくは特別牛乳またはこれらを原料として製造された食品を加工し、または主要原料とし、これに乳幼児に必要な栄養素を加え粉状にしたもの」とされています。
調製粉乳には大きく分けて次の3種類があります。
ー調製粉乳の種類ー
種類 | 用途 |
乳児用調製粉乳 | 新生児から6~9カ月の乳児を対象としたもの |
フォローアップミルク | 離乳期に離乳食と併用するもの |
治療用調製粉乳 | 代謝異常や牛乳アレルギー、乳糖不耐症(注)、先天性の病気の治療などに対応したもの |
(注)乳糖不耐症とは、小腸に乳糖を分解する酵素(ラクターゼ)が少ないため、下痢などを起こすことをいいます。
2)牛乳
牛乳には、母乳に比べてタンパク質やミネラルが多く含まれています。
乳児は消化・吸収機能が未熟であり、負担が大きいため、市販の牛乳を用いる場合には乳児の月齢に応じて希釈が必要です。
そのため、実際に牛乳を用いるのは離乳後である10カ月以降になります。
ー母乳・牛乳・乳児用調製粉乳の栄養成分の比較(100ml中)ー
栄養成分 | 母乳 | 牛乳 | 乳児用調製粉乳 |
エネルギー(kcal) | 67 | 69 | 65~75 |
タンパク質(g) | 1.1 | 3.4 | 1.5~2.2 |
ナトリウム(mg) | 12 | 42 | 14~42 |
カリウム(mg) | 50 | 155 | 56~140 |
カルシウム(mg) | 28 | 114 | 35以上 |
リン(mg) | 14 | 96 | 18以上 |
鉄(mg) | Tr(注) | Tr(注) | 0.7以上 |
ビタミンA(µg) | 46 | 39 | 53~105 |
ビタミンB1(mg) | 0.01 | 0.04 | 0.028以上 |
ビタミンB2(mg) | 0.03 | 0.15 | 0.042以上 |
ビタミンC(mg) | 5 | 1 | 5.6以上 |
(注)微量を意味し、含まれてはいるが、最小記載量に達していないことを示す。
(3)混合栄養
母乳不足や授乳の時間に制限があるときなど、授乳の一部を人工栄養で補うことをいいます。
具体的には、母乳を与えた後に不足分を人工乳で補う方法と母乳と人工乳を別々に与える(例えば、授乳可能な朝夕などの時間のみ母乳を与え、ほかの時間には人工乳を与える)方法があります。
離乳栄養
離乳とは母乳または調製粉乳などの乳汁栄養から幼児食に移行する過程をいいます。
この間に乳児の摂食機能は、乳汁を吸うことから、食物を噛みつぶして飲み込むことへと発達し、摂取する食品は量や種類が多くなり、献立や調理の形態も変化していきます。
(1)離乳の必要性
●乳汁のみでは、エネルギー、各栄養素が不足し、正常な発育や健康が保てなくなる
●離乳食を与えることで唾液の分泌も旺盛になり、消化機能が発達する
●乳歯の生歯を促す
●摂食機能の発達を助長する
●各種の食品の味やにおい、舌ざわりに慣れさせることで味覚が発達し、偏食をしない食習慣に導く
●精神の発達を促進させる
(2)離乳の時期
一般的には、生後5~6カ月ごろが適当とされます。
目安として、首のすわりがしっかりしている、食物に興味を示す、スプーンなどを口に入れても舌で押し出すことが少なくなるなどが挙げられます。
なお、離乳開始前の果汁の多量摂取によってミルクの摂取不足が起こり、栄養不良をきたす可能性があるため、離乳前はなるべく果汁の摂取を避けた方がよいです。
(3)離乳遅延による障害
●体重増加が停止し、発育不良となる
●病気に対する抵抗力が減退する
●咀嚼、嚥下の発達が遅れる(うまく噛むこと、飲み込むことができない)
●貧血になって顔面、皮膚の色が悪くなり、筋肉の弾力性がなくなる
一方、離乳の時期が早すぎると、栄養過多や消化機能の発達が追いつかず、アレルギーが起こりやすくなります。
また、離乳食は食物に対する第一印象を形成する重要な時期です。
離乳食に用いる食品の適切な選択と調理法、上手な与え方、望ましい食のリズム形成によって将来のよい食習慣の基礎がつくられます。
(4)離乳の要点
●1日1品、1回1さじからはじめ、徐々に量や種類を増やしていく。初期はおかゆ、豆腐、白身魚など、アレルギー性が低く、消化しやすい食品を選ぶ
●流動食、軟食、固形食へと移行していく
●味付けは薄味にし、偏食しないようにできるだけ多くの種類の食品を与える。甘味や塩味の強い味は週間になりやすく、子供のころから濃い味の週間が付くと、生活習慣病になりかねない
●乳児の発育、皮膚の症状、便通など体調に注意をしながら、空腹で機嫌のよいときを選んで与える
●卵黄は必ず加熱してから与え、卵白はアレルギーを起こす心配があるため注意する
●はちみつは乳児ボツリヌス症(注)予防のため、満1歳までは控える
(注)はちみつはボツリヌス菌の芽胞(種のようなもの)に汚染されていることがあります。
これが乳児の体内に入ると、腸の中で発芽し、増殖します。
ボツリヌス菌の毒素は非常に強力な神経まひ作用があり、そのために全身が動かなくなることもあり、呼吸筋までまひすると、呼吸ができなくなってしまいます。
消化管で増殖する細菌の多くは下痢を起こすが、ボツリヌス菌は腸管をまひさせてしまうため、むしろ便秘になります。便秘のほかには活気がない、泣き声が弱い、さらに筋緊張性低下、よだれが多い、首のすわりが悪くなる、眼球運動のまひ、無呼吸などの症状が現れます。
1歳をすぎると、ボツリヌス菌を消化できるようになり、腸内で繁殖できなくなります。
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