【貧血】~病気と栄養~
病気の概要
貧血とは、血液中の赤血球(ヘマトクリット)の減少や赤血球中の血色素(ヘモグロビン)の量が少なくなり、体内に酸素を十分に供給できなくなった状態をいいます。
症状として、めまい、立ちくらみ、頭が重い、頭痛、耳鳴り、顔色が悪い、肩や首筋がこる、動悸、息切れ、疲れやすい、体がだるい、注意力が低下するなどが挙げられます。
貧血には、鉄欠乏性貧血、巨赤芽球性貧血、再生不良性貧血(注1)、溶血性貧血(注2)、二次性貧血(注3)があるが、本章では食事との関係の深い鉄欠乏症性貧血と巨赤芽球性貧血について述べます。
(注1)再生不良性貧血とは、骨髄の造血機能に異常が生じ、赤血球がうまくつくられないことで起こる貧血のことをいいます。
(注2)赤血球が破壊することを溶血といいます。赤血球の寿命は約120日といわれますが、赤血球が普通より早く壊されてしまい、不足すると溶血性貧血が起こります。
(注3)二次性貧血には、腎臓機能が低下して造血を促すホルモンの産生が不十分になる腎性貧血などがあります。
鉄欠乏性貧血
鉄欠乏性貧血は、ヘモグロビンを構成する必須成分である鉄が不足することによって起こります。
(1)原因
●欠食、偏食などアンバランスな食事により鉄の摂取が不足する
●食物中の鉄は、胃液中の塩酸やビタミンCなどによって吸収されやすくなりますが、胃切除や吸収不良症候群(小腸における栄養素の消化吸収障害)などの疾患により胃酸の分泌が低下したり、ビタミンCの摂取が不足したりすると吸収が阻害される
●潰瘍、腫瘍、子宮筋腫、痔などの急性及び慢性出血によって鉄が喪失する
●乳幼児の身体的発育や月経、妊娠、分娩、授乳時などは鉄の需要が増大し、鉄不足となりやすい
(2)症状
鉄が不足すると、ヘモグロビンの合成ができなくなります。
その結果、十分な酸素を体内に運搬できなくなり、めまい、立ちくらみ、顔色が悪い、動悸、息切れ、疲れやすい、つめが上向きに反り返る、まぶたや結膜が白っぽくなるなど、さまざまな症状が現れます。
しかし、体内には鉄の貯蓄があり、それを使い切るまでは症状が現れません。
(3)食事の基本方針
鉄や鉄の吸収を促進する成分を含む食品を取る必要があるため、規則正しい食事を心掛けます。
1)鉄を多く含む食品を摂取する
鉄を多く含む食品には、魚介類、肉類、大豆製品、青菜などがあります。
中でも動物性食品に含まれるヘム鉄は、植物性食品に含まれる非ヘム鉄より吸収率が高いので、積極的に摂取するようにします。
2)良質なタンパク質やビタミンCを一緒に摂取する
ヘモグロビンをつくるには、鉄だけでなくタンパク質も必要です。
魚介類、肉類、卵、牛乳など、良質のタンパク質を摂取するとよいです。
また、ビタミンCは鉄の吸収を促進するので、十分に摂取します。
3)酸味や香辛料などを利用する
酢、香辛料などを適量に使用することによって、胃酸の分泌が促進され鉄の吸収が高まります。
4)鉄の吸収を阻害する成分の摂取を控える
穀類に多いフィチン酸、加工食品に添加物として使用されるリン酸塩などは、鉄の吸収を抑制するので控えます。
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巨赤芽球性貧血
巨赤芽球性貧血は、葉酸、ビタミンB12の欠乏によって、赤血球の親である赤芽球の合成に障害が生じ、赤芽球が巨大化して赤血球をうまくつくれないことによって起こります。
(1)原因
●葉酸、ビタミンB12の摂取が不足する
●小腸の病気や手術で小腸を切除した場合に葉酸、ビタミンB12の吸収が悪くなる
(2)症状
めまい、立ちくらみ、顔色が悪い、動悸、息切れなどの貧血症状のほかに、軽い黄疸、舌炎が現れることもあります。
特に、ビタミンB12が欠乏すると、下肢のしびれが起こることが特徴です。
(3)食事の基本方針
血液をつくるには、葉酸、ビタミンB12が欠かせません。
葉酸はレバー、緑黄色野菜、卵黄に多く含まれ、ビタミンB12はレバー、魚介類に多く含まれます。
特に、葉酸は光と熱に弱いので、調理方法に工夫が必要となります。
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