【学童期の栄養】~年代別の栄養~
特徴
学童期(6~11歳)は、幼児期に続き、全身の骨格の成長がみられ、歯も乳歯から永久歯へと生え変わる時期です。
消化・吸収力、代謝が高まり、活発に運動することも増え、エネルギー代謝は亢進し食欲旺盛になります。
また食生活の基礎ができ、食習慣が確立される時期です。
この時期の目標は正しい生活習慣を身に付けることです。
学童期の栄養の問題点と対策
(1)生活リズムの乱れ
朝食を食べない、夜遅くまで起きているといった生活リズムの乱れがみられます。
不規則な生活は疲れのもとになります。
現代では、24時間営業の店舗も増えるなど、夜も活動しやすい環境で暮らしているため、生活リズムが崩れやすいです。
早起きして太陽の光を浴びたり、規則正しく食事を取ることで生活リズムの乱れは修正されます。
(2)朝食時の欠食
起床時は、体温は低く、エネルギー源になる血中のブドウ糖が少なくなり、脳も体もエネルギー不足の状態です。
朝食を取ることで必要なエネルギーが補給され、体温が上がり、脳が活性化し、体が活発に動くようになります。
朝食を取ると体温の上昇が日中にピークになり、夕方から夜にかけて下がっていきます。
体温が下がると眠くなるため、夜は自然と眠りにつけます。
しかし、朝食を取らないと体温の上昇時刻が遅くなり、夜になっても脳や体が活発に動き続けて眠くなりません。
1日3回の規則正しい食事の繰り返しが生活リズムをつくることにつながります。
(3)栄養の偏り
学童期は、幼児期と同様に身体的成長が目覚ましい時期です。
活動量も増加するため、成人の必要量に近い栄養素を必要とするようになりますが、栄養が偏ることで不足するものがあります。
特に、学童期に不足しやすい栄養素はカルシウム、鉄です。
この時期は、丈夫な骨をつくる時期です。
特に、10代の後半に骨量が臍帯になるため、骨量を増やすためには、学童期のうちから十分にカルシウムを取る必要があります。
また、鉄は筋肉に酸素を取り込む働きをしています。
鉄を取ることに加えて運動をして筋肉量を増やすと、筋肉への酸素の運搬がスムーズになり、持久力がアップします。
このように大切な働きをしている栄養素の必要量について、小学3年生とその親世代を体重1kg当たりで比較すると、大人よりも子どもの方が多いことが明らかです。
-年齢・性別ごとの身長・体重とカルシウム・鉄の摂取基準値-
年齢/性別 | 身長(cm) | 体重(kg) | カルシウム(mg) | 鉄(mg) |
8~9歳/男子 | 130.0 | 27.5 | 650 | 8.5 |
8~9歳/女子 | 130.2 | 27.2 | 750 | 8.0 |
30~49歳/男性 | 170.5 | 68.5 | 650 | 7.5 |
30~49歳/女性 | 158.0 | 53.0 | 650 | 11.0(月経あり) |
資料 厚生労働省「日本人の食事摂取基準2010年版」
-体重1kg当たりのカルシウムと鉄の摂取基準比較-
栄養素 | 年齢/性別 | 体重1kg当たりの摂取量 |
カルシウム | 8~9歳/男子 | 650mg ÷ 27.5kg = 23.6mg/kg |
30~49歳/男性 | 650mg ÷ 68.5kg = 9.5mg/kg | |
鉄 | 8~9歳/男子 | 8.5mg ÷ 27.5kg = 0.3mg/kg |
30~49歳/男性 | 7.5mg ÷ 68.5kg = 0.1mg/kg |
(4)咀嚼
学童期は乳歯から永久歯に生え変わり、丈夫な歯をつくるために重要な時期です。
昔の食事は根菜など硬いものが多く、素材を活かした調理方法によって噛み応えのある食事でした。
しかし、現代の食事は加工食品が多く、脂質が多い傾向があり、軟らかい食事になりがちであるため、咀嚼回数も減少しています。
また、咀嚼回数が増えることで唾液が多く分泌されます。
成長期の子どもにとってよく噛んで食べることはとても大切なことであり、次のような効果があります。
●食物本来の味が分かる
よく噛むことで、しっかりと食物を味わうことができます。
その結果、味覚を鍛えることができます。
●消化・吸収がよくなる
唾液には消化を助ける成分が含まれています。
よく噛んで、唾液と食物が混ざり合うことで、消化がスムーズになります。
●虫歯の予防
唾液には口に残った食べかすを落としたり、食物で虫歯になりやすい酸性に傾いた口の中をもとに戻す働きもあります。
●噛む筋肉を付ける
噛む力を付けることで、噛み応えのあるものもしっかり噛めるようになります。
●肥満防止
あまり噛まずに早食いをするとつい食べすぎてしまいます。
よく噛んで食べることで適量で満腹になり、肥満を予防できます。
●脳の活性
噛むときにあごの筋肉を動かすと刺激になり、脳の血流がよくなります。
記憶力が高まるなど、脳の活性化に役立ちます。
(5)肥満
子どもの健康をめぐる問題の1つに肥満があり、それに伴い、2型糖尿病などの生活習慣病になるケースが懸念されています。
学童期以降の肥満は成人の肥満につながる可能性が高いため、注意が必要になります。
厚生労働省は6~15歳のメタボリックシンドローム診断基準も検討しており、肥満の小・中学生の5~20%にメタボリックシンドロームの可能性があると見解しています。
その背景には、不規則な食生活、食事や間食の取りすぎによる摂取エネルギー量の増加と、運動不足による消費エネルギー量の減少があります。
-メタボリックシンドローム暫定基準(6~15歳)-
腹囲 | 中学生80cm以上、小学生75cm以上 |
または | |
腹囲÷身長=0.5以上 | |
脂質異常 | 中性脂肪 120mg/dl以上 |
かつ/または | |
HDLコレステロール 40mg/dl未満 | |
高血圧 | 収縮期血圧(最高血圧)125mmHg以上 |
かつ/または | |
拡張期血圧(最低血圧)70mmHg以上 | |
高血糖 | 空腹時血糖値 100mg/dl以上 |
(6)こ食
家族と食事の時間や場所を共有することは、子どもの食事内容や健康面の良好さ、食事の楽しさや食欲と関連しており、子どもの健やかな成長にとって、とても大切です。
しかし、さまざまな家庭環境や子どもたちの生活スタイルの変化から、食事形態が多様化してきました。
●孤食・子食
核家族化や、女性の社会進出により、家族そろって食事をする機会が減り、家族と団らんすることなく、一人(孤食)あるいは子どもだけ(子食)で食事をすることが増えてきています。
●個食
家族そろって食事をしているものの、それぞれ好みのものを食べたり、ばらばらに食べたりする「個人食」のスタイルをいいます。
個食を容認してしまうと、子どもは栄養素のバランスに関係なく、好きなものだけを食べてしまうようになり、好き嫌いを助長してしまう原因となります。
●固食
好きなものばかり偏って食べたり、決まったものばかりを続けて食べ続けている「固定食」は、栄養素のバランスに偏りが出たり、味覚障害や肥満の原因になったりします。
●小食
食べる量が少ないと、体に必要な栄養素を満たすことができなくなってしまいます。
このタイプは、女性やダイエットをしている人に多くみられ、便秘や体調不良の原因にもなります。
●粉食
パンやめん類などの粉系が中心の食事を指します。
その背景には、食の欧米化に伴って洋食が増えてきていることや咀嚼力の低下によってやわらかいものを好む傾向であることが挙げられます。
●濃食
子どもでも手軽に調理できる加工食品や調理済み食品などを頻繁に取り入れたり、調味料を過剰に使うといった濃い味付けを好んでいると、脂質や食塩の過剰摂取によって将来生活習慣病になる危険があります。
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